ブルース・リーのドラゴンフラッグ|本当に考案した?腹筋トレーニング記録を検証

ベンチ上で高難度のフラッグ系腹筋トレーニングを行うブルース・リーと、鍛え抜かれた体幹を黒と金の光で表現したアイキャッチ

ブルース・リーの腹筋を語るとき、 必ずと言っていいほど登場する トレーニングがあります。

ドラゴンフラッグ。

ベンチなどにつかまり、 肩付近を支点にして、 身体をほぼ一直線に保ちながら 上下させる高難度の体幹運動です。

現在では、 「ブルース・リーが考案した 最強の腹筋トレーニング」 と紹介されることも珍しくありません。

しかし、 ここで一つ疑問があります。

ブルース・リー本人は、 本当にこれを 「Dragon Flag」と呼び、 自分が考案したのでしょうか。

本人のノート、日記、 トレーニングログをもとに編集された資料まで追うと、 少し違った答えが見えてきます。

ブルース・リーの記録には、 確かに 「Flag」 という種目が存在します。

しかも、 彼の腹筋トレーニングは それ一つではありません。

Sit-up。

Leg raises。

Side bend。

Twist。

そしてFlag。

今回は、 「伝説の最強腹筋」を紹介するだけではなく、 実際に何が資料に残っているのか を確認します。

そこから見えてくるのは、 派手な一種目より もっとブルース・リーらしい 身体の作り方です。

結論|「Flag」は本当に記録に残っている

先に、 今回確認できたことを整理します。

◎ 確認できる
ブルース・リーのトレーニング資料に 「Flag」という腹部・腰部の種目がある。

◎ 確認できる
1970〜71年頃のルーティンでは、 Stomach and Waistを ほぼ毎日のトレーニングとして組んでいる。

◎ 確認できる
Flag以外にも、 Sit-up、Side bend、Leg raises、Twistなど 複数の腹部種目を使っていた。

◎ 確認できる
1968年のトレーニング日誌でも、 腹部トレーニングを 非常に高い頻度で行っている。

△ 今回確認できない
本人がこの種目を 「Dragon Flag」と命名した一次記録。

△ 今回確認できない
ブルース・リー本人が 「自分がこの運動を発明した」と述べた一次記録。

つまり、

ブルース・リーが「Flag」を実践したことと、 「Dragon Flagを発明した」という話は 分けて考えた方が正確です。

資料の土台|『The Art of Expressing the Human Body』とは

今回重要になる資料が、 『The Art of Expressing the Human Body』です。

これは、 ブルース・リーの死後に誰かが想像して作った 一般的な筋トレ本ではありません。

Tuttle Publishingによれば、 Bruce Lee研究者John Littleが、 ブルース本人の ノート、手紙、日記、 トレーニングログ などをもとに編集した資料です。

John Littleは、 ブルース・リーが残した個人資料全体を 調査する許可を得た研究者として 出版社から紹介されています。

だから、 ネットで後から付いた伝説より、 本人が何を実際に記録していたかを 確認する材料として価値があります。

1970〜71年頃のメニューに「Flag」がある

同書に収録されている 1970〜71年頃の 総合トレーニングルーティンを見ると、 最初に登場するカテゴリーが Stomach and Waistです。

そこには、 次の種目が並んでいます。

  • Sit-up
  • Side bend
  • Leg raises
  • Flag
  • Twist
  • Back bend

そして興味深いのが、 このカテゴリーに 「every day」 と記されていることです。

ウェイトトレーニングは 曜日を分けています。

パンチとキックも 日を分けています。

しかし、 腹部・腰部と柔軟性については 非常に高い頻度で 取り組んでいました。

資料に残る「Flag」は、現在のドラゴンフラッグにかなり近い

記録上のFlagは、 仰向けになり、 頭側の支持物をつかみ、 身体を持ち上げる運動として説明されています。

身体を斜めに保持し、 肩付近を支点として 胴体と脚を支える。

現在 「ドラゴンフラッグ」と呼ばれている運動と、 かなり近い動作です。

だから、 「ブルース・リーはドラゴンフラッグをやっていなかった」 というのも正確ではありません。

彼の資料には、 明確にFlagが存在します。

問題は、 名称と考案者です。

では、なぜ「Dragon Flag」になったのか

現在のフィットネス界では、 この運動は一般に Dragon Flag と呼ばれています。

そして、 ブルース・リーと強く結び付けて紹介されています。

しかし、 本人のトレーニング資料に残っている名称は、 少なくとも今回確認した範囲では 「Flag」です。

つまり、

確認できる

ブルース・リーが Flagをトレーニングへ取り入れていた。

まだ確認できない

本人自身が Dragon Flagという名前を付けた。

本人自身が この運動を最初に考案した。

現在の解説サイトでは、 「Bruce Leeが考案した」と 断定されることがあります。

しかし、 BRUCE LEE MINDでは そこまで言い切りません。

分からないことを 「伝説だから本当だろう」で埋めない。

その方が、 本当に残っているブルース・リーの凄さが 見えやすくなります。

もっと重要|ブルース・リーの腹筋は「Flag一発」で作られたのではない

ドラゴンフラッグは、 見た目が圧倒的です。

だから、 あの腹筋を作った 「秘密の一種目」のように 扱われやすくなります。

しかし、 記録を見ると逆です。

ブルース・リーの腹部トレーニングには、 複数の種目があります。

Sit-up
身体を起こす。

Leg raises
脚を持ち上げる。

Side bend
身体を横方向へ動かす。

Twist
胴体を回旋させる。

Flag
身体全体を支えながら制御する。

一方向だけではありません。

曲げる。

支える。

ひねる。

横へ動かす。

脚を持ち上げる。

ブルース・リーが鍛えていたのは、 「ドラゴンフラッグという技」ではなく、 使える胴体そのものだった。

1968年の日誌を見ると、本当に腹筋を何度もやっている

さらに、 本人のトレーニング日誌を見ると 頻度が分かります。

1968年1月16日。

Side bend。 Leg raises。 Sit-up。

翌17日にも、 Stomachトレーニング。

18日にも、 Sit-up、 Side bend、 Leg raises。

19日にも腹部。

1月30日にも。

2月1日にも。

2月2日にも。

2月3日にも。

2月4日にも。

日誌を追うほど、 腹部トレーニングが 生活へ組み込まれていたことが分かります。

一度の「最強種目」ではない。

長期間の反復だった。

「最強腹筋トレーニング」という言葉に注意したい

現在、 ドラゴンフラッグは 「最強の腹筋トレーニング」と 紹介されることがあります。

確かに、 非常に高強度です。

しかし、 ブルース・リーの考え方からすると、 少し違和感があります。

Bruce Lee公式は、 彼のフィットネスについて、 単純に筋肉を大きくするのではなく、

strong。 fast。 nimble。

つまり、 強く、 速く、 機敏に動ける身体を 求めていたと説明しています。

難しい運動だから優れているのではない。

自分の目的に役立つから使う。

ここが、 ブルース・リーのトレーニングを見るときの 重要な基準です。

ブルース・リーは「腹筋の見た目」だけを求めていなかった

もちろん、 ブルース・リーの腹筋は 視覚的にも驚異的でした。

しかし、 武術家として考えれば、 腹部は単なる見た目ではありません。

パンチ。

キック。

重心移動。

方向転換。

衝撃への耐性。

上半身と下半身を つなぐ場所でもあります。

Bruce Lee公式が 「function over form」と説明するように、 彼の身体づくりは 機能を中心に進化していきました。

腹筋を見せるために動いたのではない。

動くために腹部を鍛えた結果、 あの身体になった。

腹筋だけやれば、ブルース・リーの身体になるわけでもない

ここも、 ネットの筋トレ記事では 抜けやすい部分です。

ブルース・リーは、 腹部だけを鍛えていたわけではありません。

ランニング。

縄跳び。

ウェイトトレーニング。

パンチ。

キック。

ストレッチ。

前腕。

食事。

睡眠。

そして武術そのもの。

Bruce Lee公式によれば、 フィットネスと栄養を継続的に研究し、 日々のプランナーへ パンチ、キック、腹部運動、 走行距離などまで記録していました。

あの身体は、 一種目の成果ではない。

生活全体を使った身体づくりの結果だった。

だから「ドラゴンフラッグだけ真似する」のはブルース・リー的ではない

ブルース・リーに憧れると、 どうしても 一番派手なものを真似したくなります。

ワンインチパンチ。

二本指腕立て伏せ。

ドラゴンフラッグ。

しかし、 本人の記録を見ると、 もっと地味です。

Sit-up。

Leg raises。

Side bend。

ランニング。

ストレッチ。

基本的な運動を 何度も繰り返しています。

伝説の技を真似するより、 伝説を作った習慣を真似する。

こちらの方が、 私たちには役立ちます。

ドラゴンフラッグは初心者向けではない

現在のフィットネス資料でも、 ドラゴンフラッグは 高難度の体幹運動として扱われています。

肩周辺で身体を支えながら、 胴体と脚を長いレバーとして 制御しなければならないためです。

腹部だけではなく、 広背筋、肩周辺、 臀部などを含めた 全身の安定性が必要になります。

ブルース・リーがやったからといって、 いきなり完成形を真似する必要はありません。

特に腰や首に不安がある場合、 無理に挑戦する運動ではありません。

フォームに不安がある場合は、 専門家の指導を受ける方が安全です。

ブルース・リーの記録から学ぶ「強くなる順番」

この資料から、 私たちが本当に真似できることがあります。

1.派手な最終形より、土台を見る

ドラゴンフラッグだけを見れば、 超人的です。

しかし、 その周囲には大量の Sit-upやLeg raisesがあります。

基礎の反復の上に、 高度な動きが乗っています。

2.一つではなく、複数方向から鍛える

ブルース・リーは 腹筋運動を一種類へ固定していません。

曲げる。

ひねる。

横へ倒す。

脚を上げる。

身体を支える。

同じ部位でも、 違う働きを研究しています。

3.「できた回数」より、継続した記録を見る

ブルース・リーの資料には、 日付とトレーニング内容が残っています。

これは重要です。

一日の超人的な記録より、

昨日もやった。

今日もやった。

明日もまたやる。

こちらの方が、 身体を変えます。

4.目的へ役立たなければ変える

ブルース・リーは、 同じトレーニングを 生涯固定していたわけではありません。

Bruce Lee公式も、 彼が自分自身を実験台にして、 有酸素運動、 ウェイト、 栄養などを試し続けたと説明しています。

“Research your own experience.”

「自分自身の経験を研究せよ。」

Bruce Lee公式 /日本語訳は当サイト

ドラゴンフラッグも、 神聖な「ブルース・リー式」だから やるのではありません。

自分に役立つなら使う。

役立たないなら、 別の方法を探す。

そこまで含めて、 ブルース・リーです。

実践|「一発逆転の方法」を探すのを7日だけやめてみる

ここからは、 筋トレ以外にも使えます。

私たちは、 何かを上達させたいときに 「最強の方法」を探しがちです。

最強の勉強法。

最強の英語教材。

最強の筋トレ。

最強の副業。

しかし、 方法を探し続けている間は 反復が始まりません。

① 今伸ばしたいものを一つ決める

体力、語学、仕事、読書など 一つに絞ります。


② すでに分かっている基本行動を一つ決める

新しい方法を検索する前に、 今できるものを選びます。


③ 7日だけ同じ基本を繰り返す

短くても構いません。


④ 毎日一行だけ記録する

やったか。 どうだったか。 次に何を直すか。


⑤ 7日後に初めて方法を修正する

実際の経験を材料にして 次を決めます。

これは、 「根性で同じことを続けろ」 という意味ではありません。

試す前に方法を変え続けるのをやめる。

まず経験を作り、 その経験を研究する。

ブルース・リーの学び方に かなり近い考え方です。

ドラゴンフラッグより、毎日のSit-upの方が重要かもしれない

写真映えするのは、 ドラゴンフラッグです。

伝説になるのも、 ドラゴンフラッグです。

でも、 トレーニング日誌を読んでいると、 別のものが目に入ります。

Sit-up。

Leg raises。

Side bend。

またSit-up。

またLeg raises。

何度も繰り返されています。

人から見える「すごい一回」の後ろには、 人から見えない「普通の反復」がある。

これは、 ブルース・リーの身体だけの話ではありません。

上達している人を見ると、 私たちは結果を見ます。

でも、 本人が毎日やっていることは 驚くほど地味な場合があります。

資料から見ると、むしろこちらがブルース・リーの凄さ

「ドラゴンフラッグを考案した男」 という肩書きは、 確かに格好いい。

しかし、 資料から確認できるブルース・リーは もっと面白い人物です。

腹筋について調べる。

複数の方法を試す。

日誌へ書く。

毎日のように繰り返す。

ウェイトもする。

走る。

ストレッチもする。

食事も研究する。

結果を見て、 また変える。

ブルース・リーの秘密は、 「最強種目を知っていたこと」ではない。

自分の身体を、 何年も研究し続けたことだった。

まとめ|「Dragon Flag伝説」より面白い事実が残っている

  • ブルース・リーのトレーニング資料には「Flag」が実在する
  • 1970〜71年頃の腹部・腰部ルーティンにも組み込まれている
  • 現在のDragon Flagにかなり近い運動である
  • 一方、「Dragon Flag」という名称を本人が使った一次記録は今回確認できなかった
  • ブルース本人がこの運動を発明したという一次記録も今回確認できなかった
  • 腹部トレーニングはFlag一種ではなく、Sit-up、Leg raises、Side bend、Twistなど多彩だった
  • 1968年の日誌からも、非常に高頻度で腹部を鍛えていたことが分かる

だから、 「ブルース・リーは ドラゴンフラッグを考案したのか」 という質問には、

「ブルース・リーがFlagを実践したことは確認できる。 しかし、現在の名称と考案者伝説までは 同じ強さでは確認できない」

と答えるのが、 今のところ最も正確でしょう。

でも私は、 その方がむしろ好きです。

伝説の一種目で 突然あの身体になったのではない。

毎日、 地味な基本を繰り返した。

自分の身体を記録した。

方法を研究した。

必要なら変えた。

最強の方法を探す人ではなく、 普通の方法から最大限学び続ける人だった。

その事実の方が、 私たちにはずっと役立ちます。

ブルース・リーの身体研究をさらに深く読む

今回参照した 『The Art of Expressing the Human Body』には、 腹筋だけでなく、 ウェイト、 持久力、 ストレッチ、 前腕、 トレーニング日誌など、 ブルース・リーの身体研究がまとめられています。

「ブルース・リーの筋トレメニュー」を 一つだけ知りたい人より、 彼がどのように自分の身体を研究し、 方法を変えていったか知りたい人 に向いた資料です。

※本記事はAmazonアソシエイト・プログラムを利用しています。

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主な参考資料

Bruce Lee / John Little編
『The Art of Expressing the Human Body』
Tuttle Publishing, 1998

Bruce Lee公式
「Nutrition and Fitness」

Bruce Lee公式
「Research Your Own Experience」

※現在「Dragon Flag」と呼ばれる運動について、 本記事ではブルース・リー本人の資料で確認できる 「Flag」と、後世に普及した名称・考案者説を区別しています。

※ドラゴンフラッグは高負荷の運動です。 本記事はブルース・リーのトレーニング史を紹介するもので、 完成形の運動を無条件に推奨するものではありません。

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